加古川心筋梗塞訴訟
もう数ヶ月前のこと、ある公立病院で心筋梗塞の搬送が遅れて死亡したことで訴訟になり原告の訴えが認められたことが報道されていた。その時は、まあ心筋梗塞ならすぐに対処しないでモタモタしているとまずいよね、訴訟になるのももっともなことかな、くらいにしか思っていなかった。しかしある専門雑誌に指導的立場の循環器医がこの事件を大変懸念していることが書かれていたため、おかしいなと思ってインターネットで調べてみた。最近は新聞報道ではわからない詳細な情報がインターネットで入手できるため便利な世の中になったと思う反面、偏った悪い情報もすぐに広がってしまうようだ。
インターネットでのいろんな情報をみると裁判で認定されたことと、関係者らしい?方からの情報に大きなズレがあることがわかった。関係者からの情報とされるものは、急変した経過から実際の緊迫した状況が見えるような内容であり、大変苦労して各病院に連絡したが断られたため搬送に時間がかかったように思えた。裁判では原告の訴えをそのまま認めて被告の意見は認定していない。各病院へ連絡したり断られたりしたことが認定されていないため、その間は放置したことになっている。
裁判は真実を追求する場ではなく、結果や記録のある事だけをみて専門家でない方がどちらの言い分が妥当か判断するのであるから高度に医学的な判断は無理がある。当然どちらも自分に都合の良い事しか言わないだろうから、都合の悪い部分もわかる知識とその理解がないと判断は難しい。学会や専門家の会議での発表ならおかしな所があればすぐにつっこみを入れてくるものだ。それらの学会・会議では疾患の最善の治療、最善の対応を検討するのであるから、真実を追究する必要があるし医学も進歩する。この判決は医学の進歩だけでなく、医療体制の改善にも寄与しないのではないだろうか。
もし休日夜間に無理をして救急患者をみて判断が少しでも遅れると多額の賠償が待っているなら、少ない人数で無理している病院は救急を閉めざるを得ない。こういう判決は少ない人数で頑張っている現場に大変な無力感を与えてしまう。今医師不足が言われているが、医師は昔はもっと少なかった。これまで少ない医師で無理していたため表面に出てなかっただけである。専門医がいないため他の病院に転送するにも数箇所の病院を何度も連絡してやっと受けてくれる現状を一般の方々は知らないようである。休日夜間にすべての疾患に対して最善の救急体制を整えている病院なんてあるわけがない。救急患者は診察して検査して初めて病気と重症度がわかるものであるから、裁判所の判決で要求される通りであれば、すべての疾患に最善の判断と対応ができなければ救急患者は受け入れ出来ないことになる。そのため救急患者を受ける病院がなくなればどうなるかは予想できると思う。この事件どころではない多数の患者さんが手遅れになるかもしれない。
ここまで日本の社会システムが歪んでしまったら今までの体制が維持出来るとはとても思えない。一般の方々の考えが社会システムを作り裁判所の考え方に影響した結果であるから、国民の考え方が変わらなければどんどん悪い方向に向かうようで大変心配である。
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