妊婦救急対応に加算 厚労省方針
厚生労働省は五日、救急搬送された妊産婦を円滑に受け入れた医療機関に対する手厚い加算を、二〇〇八年度の診療報酬改定に盛り込む方針を中央社会保険医療協議会(中医協)に示した。 奈良県内の妊婦が昨年、約二十カ所の病院に受け入れを断られ大阪府内の病院まで搬送されて死亡。今年八月にも同県内で妊婦の搬送先が決まらず死産となるなど、各地で同様のトラブルが相次いでいることから、緊急時に妊産婦を幅広く受け入れるよう報酬面から医療機関を誘導するのが狙い。 具体的には「緊急搬送受け入れ料(仮称)」を診療報酬項目として新設。帝王切開が必要な分娩(ぶんべん)や重い妊娠高血圧症など保険適用の対象事例だった場合は、受け入れた件数ごとに報酬を加算する方向だ。 ただ、受け入れ後に大きな異常がみられず自然分娩に至った場合は、現行通り保険対象外として加算しない。 受け入れ拒否をめぐっては、産科医療の現場から、危険性の高い分娩に対応できる施設が少ないことや、勤務が過酷で産科医が減少しているなど「不十分な医療提供体制がトラブルの背景」と指摘する見方が強い。このため、報酬面で受け入れ医療機関を優遇しても、実効性は未知数だ。 厚労省は併せて、胎盤が子宮口をふさいで出産の際の危険性が高い「前置胎盤」や、心臓や腎臓の疾患を併発している妊婦の治療・分娩も、新たに保険適用とする方針を提示した. 2007年10月6日朝刊」
新聞を見ていると妊産婦の緊急搬送が拒否されたとの記事が多くみられる。いかにも病院側が怠慢で拒否しているような印象であるが、緊急搬送拒否という表現には大変違和感がある。受け入れ態勢が整備されており、当然受け入れなければならないのを断るなら拒否としても良いと思うが少ない人員で他の重症患者さんの治療をしている場合でも、それを放り出してでも他の患者さんを受け入れるべきなのだろうか。その場合に受け入れ困難と連絡してもやはり拒否と言われるのだろうか。
どうも一般の方は医療現場は充分な人員が用意されており24時間いつでも受け入れできる体制で運営されていると考えている節があるようだ。当然そうあるべきだから行政がそれを目標に運営、指導していると考えるのが普通であろう。しかし厚生労働省は現場の実態を知りながら敢えて改善しようとしてこなかった。数年前に勤務医の当直業務を規定範囲に抑えるようにとの通達があったが、しかし現在の診療報酬体系ではそれに見合う数の医師を置くのは無理である。そのため通達を出しても、強力な行政指導をしないのは、そうすればほとんどの病院が運営できないため閉鎖せざるを得ないのを知っているからである。
しかしマスコミは本当の産科崩壊の原因をあまり報道していない。昨年の福島県の大野病院の産科医逮捕がどれほど現場の士気を低下させ産科医療から撤退させているのかを知っているのだろうか。これまで夜間でも無理して緊急患者さんを受け入れていたのは出来る範囲で頑張って助けようとする士気の高さからであった。それが地方の県立病院で1人で24時間体制で自己犠牲しながら頑張っていた産科医を逮捕したことがどれほどの衝撃かは現場でないと理解できないかもしれない。新聞報道では当初いかにも有り得ないミスで死亡させたように書かれていた。しかしその詳細が明るみに出るにつれて解ってきたのは、本当にその現場では出来る限りの処置を行っても助からなかった重症の患者さんのようである。当然人数の多いあらゆる緊急対応ができる大都市の病院であれば助かった可能性はあるかもしれないが、それでも助けられるのかは解らないとの専門医の意見もあった。そのような対応を地方のすべての病院に求めるべきなのだろうか。それを医療を知らない警察と検察が逃亡の恐れもないのにあえて逮捕して、極悪犯人のように全国のテレビにその様子が映し出されたのである。その後全国の医学会、産婦人科学会等が逮捕は不当であるとの声明を出しても当時の法務大臣、検察は無視して起訴に持ち込み、現在裁判が進行中である。やがて裁判でその内容が明らかになると思われるがもう既に産科医は現場から離れつつある。
何とか出来る範囲でも助けようと無理して不十分な体制で緊急患者を受け入れても不幸な結果であれば、その結果で遺族が訴えれば逮捕されて犯罪人となるのである。これほどの理不尽な恐怖があるだろうか。それなら体制が充分な時のみ受け入れるのは当然であり、司法もそれが正しいと判断している。しかし夜間でもあらゆる緊急事態に即座に対応できる充分な体制を整えられることが現実に可能であるのかは別問題である。診療報酬はどんどん下げられており、夜間に来るか来ないかわからない緊急患者さんの為にそれだけの人員を配置するのは税金等を多額に投入しなければ無理であろう。また多少の診療報酬を上乗せしても現場の士気が低下して産科医が不足している現状ではすぐに改善出来る見込みはない。
一部のマスコミもようやく現場を調べ始めて、厚生労働省の医療政策がおかしいと気付き始めたようであるが、それでもまだまだ現場を知らない。もう既に医療崩壊は進行中である。これから政策を方向転換しても改善するのに5年から10年はかかるであろう。それまでの間はどんどん医療崩壊が進行し、不幸な患者さんが増えないかと、大変心配である。
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